第六十八章善く戦う者は怒らず。...善く人を用うる者は之が下と為る。

原文

善爲士者不武。善戰者不怒。善勝敵者不與。善用人者爲之下。
是謂不爭之徳、是謂用人之力、是謂配天、古之極。

訓み下し文

善(よ)く士(し)為(た)る者(もの)は武(ぶ)ならず。善(よ)く戦(たたか)う者(もの)は怒(いか)らず。善(よ)く敵(てき)に勝(か)つ者(もの)は与(あらそ)わず。善(よ)く人(ひと)を用(もち)うる者(もの)は之(これ)が下(した)と為(な)る。
是(これ)を不争(ふそう)の徳(とく)と謂(い)い、是(これ)を人(ひと)の力(ちから)を用(もち)うと謂(い)い、是(これ)を天(てん)の配(はい)と謂(い)い、古(いにしえ)の極(きょく)。

解釈

優れた名士は武力で物事を解決しない。優れた戦士は怒りに身を任せて戦わない。上手に勝ちを収める者は競争しない。上手に人を使う人はへりくだってお願いする。
これが争わない徳であり、人の力を使うことであり、これこそが、太古の昔に極められた天の巡りあわせだ。

備考

人と張り合って力を使いつくすよりも、相手の力を上手に使った方がうまくいくことは間違いない。それをやると第六十一章となる。現代でもライバル会社を含めた他社と提携して製品開発することがもてはやされてますな。

こういう工夫が老子で批判される小ざかしい知恵でなければいいのだが。

テーマ

聖人の心得道者が争うとき-不争の徳道者の天下取り谷-低いところへ

ヒント

不爭(あらそわず)

競争しないこと。
→道者が争うとき-不争の徳

與(よ)

与の旧字。
与える。
仲間になる。くみする。
〜と。英語でいうand

極(キョク)

頂点まで到達すること。極めること。
やりすぎ。
→専門用語

古(いにしえ)

太古の時代。その叡智。

熟語(2種/4回)

是謂不爭

文字(24種/43字)

天之者謂下爲善不是人爭用與徳士極勝力戰武怒敵配古

ルビ無版下し文（コピペ用）

善く士為る者は武ならず。善く戦う者は怒らず。善く敵に勝つ者は与わず。善く人を用うる者は之が下と為る。
是を不争の徳と謂い、是を人の力を用うと謂い、是を天の配と謂い、古の極。