マンガ・ギリシャ神話 アポロンの哀しみ

だんだん神が人間界に降りてきます。人間とまじわって英雄を産んでその子は各地の国王になっていく段階です。古事記にも同じ流れがありますね。ゼウスは調子こいてやりたい放題なので。ギガンテスやデュポンが襲ってきます。激しい戦いが起きるので、少年漫画ならお得意のバトルモードに入るのですが、わりとゆるーい描写で終わっていきます。てゆうかこのギガンテスやる気ないだろ。まあバトルアクションには期待しないように。

マンガギリシア神話 (2) (中公文庫)

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さて、タイトルにもなっているアポロンですが、超絶イケメンでモテモテです。しかし、彼は下げマンならな下げチン。好きな相手は女も男も不幸になります。さすがイケメン!どっちもいけるのか… 。これはお姉様方へのサービスタイムですね。

一方、お兄さん向けのサービスタイムを提供してくれるのはヘパイストスです。彼はゼウスとヘラの間に生まれた長男なのですが、見た目は悪く足も不自由な形で生まれたのでヘラが嫌って育児放棄したので、他の神の下で育てられたのでした。かわいそうなヘパイストス。生みの母に「私あんなみっともない子を産んだ覚えは無いわ」と言われる始末。子供の頃からこんな調子で疎まれて育ったヘパイストスですが一つだけ誰にも負けない特技がありました。手先が器用で何でも作ってしまうのです。生活に必要な便利な道具を次々と生み出したので、一部の神からは重宝がられて才能を認められました。そんなところから嫌な目に遭うほど自分の工房に引きこもりがちになり、もの作りに熱中するのでした。生まれつき足の悪い彼はその分野で認められる以外に生き延びる道はなかったのです。他人事とは思えなさ過ぎる… !

そんなヘパイストスですが、母親にだけは認めてもらいたくて一悶着起こします。その過程で売り言葉に買い言葉から会心の一撃が飛び出します。みんなのアイドル、アフロディーテとの結婚が決まるのです。おい、お前ら!世の中意外と言ったもん勝ちだぞ。

美の女神と一緒に暮らせるとあってヘパイストスは浮かれますが、無理矢理結婚を決められてしまったアフロディーテは納得していません。夜の仕事をあの手この手で引き伸ばし、どうせ抱かれるならと軍神アレスと不倫してしまいます。うわー寝取られた(笑)やはり「俺ら」にはそれしかないのか。おせっかいなことに、二人の密会を目撃した他の神が、そのことをヘパイストスにほのめかします。なんでそんなおせっかいなことをすんねん。

ヘパイストス罠を仕掛けて浮気現場に踏み込みます。彼はベッドに細工を施し「ギシアンが始まると上から網が降ってくる」ようにしておいたのです(まさに一網打尽) 。見てしまった、決定的事実… !こんな証拠がでてしまっては夫婦としてやっていく事は不可能なので、渋々慰謝料を受け取って離婚が成立するのでした(童貞のまま)。

傷心のヘパイストスはますます引きこもりがちになり、ものづくりに励みます。そこに現れたのがアテナイでした。勝利の女神アテナイは日夜勝利のための努力に余念がありません。彼のものづくりの腕を見込んで新兵器の開発を依頼しに来たのです。バツイチ童貞の欲求不満が爆発したのか、こともあろうに仕事の見返りとして「一発やらせろ」を要求します。プライドの高いアテナイがそんな頼みを聞くはずもなく、抱きついてくる彼
を足蹴にして逃げまわります。哀れヘパイストス、足の悪さ故になすすべもなく敗退、無謀とも言える告白も失敗に終わった…かのように見えましたが奇跡が起こります。アテナイの足に正体不明の液体が粘り着いていたのです(さすがヘパイストス、俺たちにできないことを平気でやってのける!そこにしびれるあこがれるぅ) 。あまりのおぞましさんにアテナイは謎の付着物をそそくさと拭い取って捨てると、あら不思議、そこから何かが生まれます。やったぞ!ヘパイストス! 見事アテナイに子供を産ませた!これでお前も立派な親だ(童貞のまま) !

そこで生まれた子は成人するとアテナイの王になります。そこに至る経緯はこんな感じです。アテナイに住んでいた人間は自分たちが守護神を求めました。そこで、神々の中からアテナイとポセイドンが立候補したのです。アテナイは自分を守護神として選んでくれれば見返りとしてオリーブを与えることを約束し、ポセイドンは塩を与えることを約束しました。人々は海が近いので塩は取れることに着目しアテナイを選んだのです。そして女神との関係を一層強化するために彼女の子供を婿として迎え、町の名前をアテナイとしたのです。

人間が神様を選ぶという発想はユニークですね。それにしてもこの話は奥が深い。アテナイ市民のルーツをたどると母はアテナイ(処女) 、父はヘパイストス(童貞) 、その両親はゼウスとヘラ。堂々たる血脈。身持ちが固く努力家で頭が良い家系だということです。

この巻はタイトルこそアポロンに譲っていますが、堂々たるキャラの立ちっぷり。ゼウスに勝るとも劣らない存在感、ヘパイストスこそ、影の主役と言えるんじゃないでしょうか?