マンガ・ギリシャ神話 冥界のオルフェウス
さて、やってまいりました第三巻。今回も盛りだくさん。笑いあり、涙あり、鬼畜あり、お色気あり。お兄さんにもお姉さんにも嬉しい一冊ですよ。
- 作者: 里中満智子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2004/01/01
- メディア: 文庫
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童貞暴走編
冥界の王、ハデスさん。真面目な彼はこれまで女には目もくれず、仕事一筋で生きてきました。
「男がなりふり構わず力ずくで迫るというのは情熱の表れだから、そこに女は感動するんだ」
そんな彼に冒頭からいきなりフルスロットルのアドバイスをやってくれるのがゼウスさん。いやいや、童貞の彼にいきなりそんな高度なテクを教えちゃいけないでしょう。あらあら。ハデスさんもそれを真に受けて一目惚れした女の子を拉致しちゃった。しーらないっと。
かわいそうに連れ去られた少女は冥界の王妃ペルセポネとして冥界で暮らすことになります。
引きこもり編
それに怒ったのがペルセポネの母のデメテルです。娘の拉致にゼウスまでが関わっていることに怒って身を隠してしまいます。豊穣の女神である彼女が居なくなったことで作物は枯れ、みんなが困ってしまいました。「知ってる。それ、古事記で見た」
理不尽編
続いて登場するのがエコーさん。エコーってギリシャ神話の登場人物だったんですね。
おしゃべり大好きな彼女はゼウスの良き話し相手です。しかし、楽しそうにしているとヘラに嫉妬されるので、自慢のおしゃべりで言いくるめてやろうとしたのが運の尽き。余計に怒りを買って、相手の言葉をそのまま言い返す事しか出来なくなってしまったのでした。ただの友達なのに…理不尽すぎる。
因果応報編
その彼女(エコー)は片思いの相手も悪かった。ナルシストの語源となったナルキッソスではまともに相手してもらえません。彼の冷たいあしらいをそのまま言い返してしまい、完全破局… 。悲しみのあまり山奥に引きこもってしまいます。それで、山に向かって大声で呼びかけると、声がかえってくるのですね。早い話がやまびこです。
言い寄ってくる女の子をことごとく冷たくあしらい続けたナルキッソスにも災いが訪れます。水に映る自分の姿に一目ぼれして報われない恋に絶望して水仙の花になります。これは有名な話ですね。
やらないか編
ワインと狂乱の神様ディオニュソス。大物の割に聞き慣れない名前だなと思ったら、日本ではバッカスの方で通ってるらしい。ギリシャ神話の中ではちょっと異質なエピソードに思う。
その神様が母親に会うために冥界への入り口を探している。その場所を教える見返りとして、男に差し出したのがお尻の穴…でいいのか… 。やっと出ました!男同士の交わり! これを見ずして何の神話か!
ウィキペディアを見てもそのようなエピソードがないところから、もしかしてオリジナル…ゴクリ…
サゲチン編
さて、狂乱の次は理性のアポロン君。やっぱりアポロンは女運最悪です… 。恋人のコロニスはあっさり浮気しちゃってます。それに腹を立てたアポロンは恋人を殺害。理性はどうした理性は! さすがの神様も恋心ばっかりはコントロールできない模様(苦笑)。しかし、彼女はすでにアポロンの子を宿していたので、アポロンは子供だけ助けます。
ケイローンに育てられたアポロンの子はケイローンから医学の手ほどきを受けます。後に医学の神様と呼ばれることになるアスクレピオスこそがその人です。彼は腕が良すぎて、死んだ人間の蘇生術まで習得します。それが世の中の秩序を乱すと判断され、ゼウスの電に打たれて死んでしまいます。
逆ギレ編
納得いかないのが父親のアポロン。ゼウスには逆らえないので、なぜかキュクロプス(サイクロプス)に八つ当たり。「お前がゼウスに雷の技を教えたから、こうなったんだ! 」ザコい、雑魚すぎる… 。これじゃ女も不幸になるわ。
スルー編
コミックのタイトルにもなっているオルフェウスの登場です。このエピソードは有名すぎて取り上げるまでもないでしょう。
百合編
男の中の男、ゼウスさんにも見せ場の一つくらいは必要ですよね。今度はアルテミスのお付きの娘カリストにもお手付きみたいですよ。しかし、彼女は男嫌いで処女を貫いている美女ですから、ゼウスがそのままの姿で近づいたところで警戒されて口をきいてももらえません。そこでゼウスはアルテミスに姿を変えて近づきます。こういうところは悪知恵が働くのね。これは…百合の予感(ぺろり)
と思いきや、やっぱり元の姿に… 。ですよねー。女同士じゃ赤ちゃんできませんもんねぇ。そして百発百中のゼウスさん、やっぱり妊娠です。
おっぱい編
さぁお兄さんお待ちかね。今回一番のサービスタイムですよ!
永遠に処女であることを誓ってアルテミスの従者にしてもらった約束もあってカリストは妊娠した事を打ち明けられません。苦悩が続いたある日…アルテミスから水浴びを誘われます。
おおおご褒美ご褒美、アルテミスたんのおっぱいおっぱい!
断り切れずに脱いだ彼女のお腹は明らかに妊婦のそれでした。アルテミスから破門された彼女に追い打ちがかかります。ゼウスの浮気に嫉妬したヘラによって熊の姿に変えられます。これは可哀想。彼女は何も悪くないやん… 。
近親相姦編
フェニキアの姫はたいそう美しく、日ごろからアフロディテよりも美しいと自慢しておりました。その噂がアフロディテの耳に届き、美の女神に対する挑戦とみなされて報復を受けることになります。姫が受けた罰とは「父親への恋」でした。彼女は自分の思いを遂げるため、顔が見えないように父親に近づき、契りを交わします。後日、その行為は父親にばれてしまいます。
自分の娘と交わったとなれば王としてのメンツが丸つぶれになってしまいます。父は娘を許すことができずに殺そうとしますが、彼女は逃げます。彼女は既に父親との間に子を宿していました。
ショタコン編
結果生まれるのがアドニスです。たいそうかわいい赤ちゃんだったので、アフロディテに拾われます。そんなに気に入ったのなら自分で育てればいいのに、わざわざ冥界まで連れて行きペルセポネに預けて育てたせます。
やがて彼は美しい少年に育ちます。少女漫画家だけあって、かわいい少年を描き慣れているのかな?おっさんが見ても愛らしい男子です。プライドの高いアフロディテまでがぞっこん。どうやら彼女はショタコン?一緒に暮らそうと試みます。ペルセポネも血は繋がっていないとは言え、大事に育てた立派な我が子を手放したくありません。両者とも互いに譲らず、裁判に持ち込まれます。そこで裁判官は「双方子供の手を引き、最後まで離さなかった方が母親だ」とは言いませんでした。残念… 。
てごめ編
最後に登場するのは、狩人のオリオンくん。確か彼って棍棒を振り回しながら荒野を疾走しているマッチョマン…のはずなんだけど、なぜかお父さんは海の神様ポセイドン。野獣退治の見返りに美女を要求して早速無理矢理押し倒しているし。
ずいぶん乱暴な男だけど、じゃじゃ馬のアルテミスが彼に恋模様… 。彼女の恋心に感づいたマジ小物のアポロン君が、そこに横槍を入れます。結局、アルテミスはオリオンを丸太と間違えて弓で射殺してしまうんだとさ。
番外編
アポロンとアルテミスといえば、ナムコのシューティングゲーム「フェリオス」ですよね。僕はこのゲーム結構やったこともあって、二人は恋人の関係だとすっかり勘違いしていましたが、双子の姉弟なんですよね。危ない危ない。今更ながらに思い返してみればアルテミスのイメージも本来のそれと全く違うし、アポロンはペガサスに乗ってないし。なんで勘違いしてなんでしょうね。こういうこともあるから、ちゃんと原典は押さえておかないといけないですよね。
もう一つ気になったのがヘカテです。
古代ギリシャでも十字路は悪霊が行き交う禍禍しい場所であったらしい。犯罪が起きないようにヘカテの像を置いたようだ。白川静が提唱する古代中国の宗教観でも道路や交差点は除霊すべき恐ろしい場所であると定義されてましたね。こんなところにも共通点があるとは意外でした… 。