マンガ・ギリシャ神話 激情の王女メデイア

マンガ ギリシア神話〈6〉激情の王女メデイア (中公文庫)

マンガ ギリシア神話〈6〉激情の王女メデイア (中公文庫)

怖い…怖いよママン。タイトルにもなっている女性メデイア。

前巻のヘラクレスがあまりにも快活で爽快感溢れる冒険をしてくれたその直後にこれですよ… 。もうそのギャップに打ちのめされます。しかし、彼女のような重い女性が現実に存在するのがまた更に怖いところ… 。恋は盲目と申しますが、恋する自分に酔いしれてしまうと、彼女のようになってしまうのでしょう… 。好きな男のためにはなんでもするという情熱は美しいものではありますが、度を過ぎれば只の恐怖でしかありません。彼女の重さに打ちひしがれるイアソンの気持ちもわかります。これはツラい(苦笑)

とは言え、メデイアも不幸ですね。女の業のすべてを押し付けられて、魔女として描かれるのはたまったものではありません。凄腕のハッカーが自由を愛するためにやりすぎて歯車が狂っていく構図に似ていますね。圧倒的な知識は何かと黒魔術にされてしまうようです。ちなみにメデイアを連れ帰ったイアソンが率いた船アルゴーは往年の名機mzシリーズのシンボルマークとして採用されています。どうでもいい知識ですが、ごく一部のおっさんには思い入れがあるかもしれませんね。

今回の豆知識は太陽に向かって飛ぶイカロスです。「イカロス」の名前は知っていましたが詳しいエピソードは知りませんでした。彼の父は天下の名工ダイダロスミノタウロスが閉じこめられたクレタ島の迷宮は彼の手によるものです。ダイダロスは王の命令で脱出不能の迷宮を建造しました。王子ミノタウロスを幽閉するためです。しかし王子は殺害された上に殺人犯に脱出されてしまったので、「詐欺の罪」で自身が作った迷宮に息子のイカロスとともに閉じ込められます。そこでダイダロスは迷宮の中で手に入る材料(羽毛と蜂蜜)を使って翼を作り、それを背中につけて舞い上がり、遥か頭上に開いた窓から脱出したのです。「この翼は蜂蜜で接着されているので、太陽に近づきすぎると熱で溶けてバラバラになる」若きイカロスはダイダロスからこのような注意を受けていたにもかかわらず、自由に空を羽ばたく楽しさに酔いしれ高く高く舞い上がり、やがて墜落して死んでしまいます。うん、やはり墜落してこそ鳥人間。そうそう、タロス(いわゆる巨大ロボ) はダイダロスのプロダクト。某シュミレーションゲームでシャレにならない強さで恐れられたユニットですが、神話上ではアキレス腱に弱点があり、あっさりとメデイアに倒されてしまっています。