谷-低いところへ

谷-低いところへ

解説

道の姿は水を貯めた容器にたとえられる。よって、水の特性を知り、水を貯める秘訣を知ることが道への近道となる。低いところへ流れるのが水の特性の一つであるから、自ずと川や海がたとえで出ることになる。そこで水が流れる章をまとめてみた。

水が低いところへ流れることの良さを描いたのが第八章だ。ここでは、はっきりと「道に近い」と言っている。そこで水とは、ただ流れるだけではなく、あらゆる生物に公平に利益を与え、自分が汚されながらも不平や見返りを求めないからこそ道なのだとしている。

第三十二章道で天下を治めるのは、水が川へと流れてやがては海へ注ぐように自然に低いところへ行くものだ。支配者はもっとも低いところに居ることが自然だ。

第六十一章大国は川で言えば下流。高い場所にある川は支流。川は最後には低い大河へと交わっていく。大国は下流のようにじっと交わってくるのを待って受け入れればよい。

第六十六章海がどんな大河より大きいのは、何よりも低いところにあるからだ。同じように道を極めた王は民よりも低いところにいるべきだ。

第六十七章では、人生をより良く過ごすための三つの信念を谷にたとえている。谷底を流れる水が生物を慈しむように、人もまた慈しみを第一に考えてつつましく生きるのだ。もし、谷が深さをなくせば、水は枯れて生物は死ぬ。同じように、人が優しさを忘れてでしゃばるようなら、人は枯れて死んでしまう。

第二十八章では、単純に低いところに行けばいいのではなく、一度は高いところに行っておいて、敢えて低いところに居ることで、誰より深い谷となれると言っている。

第六章は水は流れていくものなのに枯れない川の不思議さを女が子を産んで家を存続させていく生命力にたとえている。

総合的なまとめは第六章にあると考えられる。人類を支えているの女性の谷の力と言っても過言ではない。

第六十八章上手に人を使う人は低いところへへりくだる。