再開可能になりました。

はてなダイアリーが一時的に更新停止になっておりましたが、はてなブログへの移行が完了したということで、更新できるようになりました。
前回の投稿日時を見ると6年前ですね。
熱心に漫画を読んでおりますが、もうページをめくることもできません。
と言うか娘に本をおねだりされることもすっかりなくなりました。
個人的に好きなことを書き散らしているブログ、ペンちゃん日記があるのでこちらの更新は微妙です。

トゥーランドット(マンガ名作オペラ)

今度はオペラシリーズ。文化にはまるで理解のない残念な人なので、当然オペラのことはまるでわからない素人。シリーズ中、どの一冊から入るか悩みどころだったが、美しい女性が表紙を飾るこの一冊をチョイス。

読了後の感想は「これは良い」と言ったところか。

漫画としては平凡なのだが、それゆえに話の筋がわかりやすく、素人がオペラに触れるきっかけとしては理想的であるとも言える。ところどころに漫画的なお約束の展開を外していたり、妙なセリフの言い回しがあるのは、原作に忠実に作っているということらしい。そう、このシリーズは「面白い漫画」ではなく「オペラを面白くする漫画」なので漫画そのものの面白さを期待してはいけない。この本を読んだら、動画サイトにアップロードされた極一部の歌だけでも良いので視聴してみることをお勧めする。わけのわからない外国語の退屈な歌だという先入観が多少は崩れていると思う。文化不毛の人生を進んできた野蛮人が「もうちょっと若いうちにこういうものに触れておけばよかったな」と思い直す程度には影響力はあった。

それにしても表紙のトゥーランドットの美しさといったら… 。これは永久保存ものですよ。相当力入ってます。表紙だけでなく中身のほうもかなり書き込まれていますね。ギリシャ神話シリーズよりも映像(女性と背景)の美しさに重点を置いているようです。読者がイメージを膨らませやすいように配慮してあるんでしょうね。

これは、シリーズ通して「買い」ですね。

ジュリアスシーザー(シェイクスピア・ジュニア文学館 4)

これはジュリアスシーザーの物語ではない。繰り返す。これはジュリアスシーザーの物語ではない。

なんだよこれ… 。ガリア遠征の快進撃に夢を膨らませ、元老院とのルビコン川を挟んでの対峙に胸を膨らませ、クレオパトラとの濡れ場に下半身を膨らませていた俺の気持ちを返せ!!もう一度繰り返す。クレオパトラとの濡れ場に下半身を膨らませていた俺の気持ちを返せ!!

こんなタイトル詐欺、生まれて初めての経験だよ… 。例えるなら「今夜のおかずはトンカツだよ」と言われたのにでてきたものが湯豆腐だったくらいのレベルですわ。 「機動戦士ガンダム」というタイトルの映画を見に行ったら、ランバラルが木馬の打倒に執念を燃やす話だったくらいのレベルですわ。そりゃあ湯豆腐は湯豆腐で美味しいですよ!?ランバラルは男の中の男ですよ!?どちらも主役として不足はないんです。適切なタイトルさえ付けてくれれば。

ということで、この物語を予備知識なしで読もうとしている人は要注意です。この物語の主人公はジュリアスシーザーを殺害したブルータスです。カエサルは殺されるべき悪人として登場します。物語は殺される直前から始まるのでカエサルの活躍を期待しよう行けません。マジでクレオパトラは一mmも登場しません。

ちなみに、物語としては大変面白いです。ブルータスって割と裏切り者の印象が強いですが、この物語では誇り高き英雄として扱われてます。打倒するべき相手となるカエサルも根っからの悪人ではなく、お互いの理想が食い違っていたがために対立が起きたという解釈をしているようです。歴史上の英雄を扱うのですから、こういった配慮は好感が持てます。

それにしても暗殺物ってどうしてこんなに心惹かれるんでしょう。始皇帝暗殺を企てた荊軻張良あるいは順帝擁立のためにクーデターを起こした孫程などなど。妥協を許さない、決定的な価値観違いのぶつかり合いだからでしょうか?将軍として兵卒を指図しての戦いよりも、暗殺の方がよほど直接的で命がけだからかな。

物語のクライマックスはカエサル暗殺後の演説です。ブルータスはカエサル暗殺の正当性を知らしめるべく市民たちを集めて演説を行います。カエサルの後を狙うアントニウスは出遅れを取り戻すべく弔いの演説の機会を願い出てブルータスの非道をなじりにかかります。春秋戦国時代の中国でも倫理を踏みにじるライバルを「檄を飛ばす」ことで世論を動かして封殺しましたが、西洋でも似たような文化だったのですね。先に演説したのはブルータス。カエサルの偉大さを讃えつつも、共和制の理念は個人の才能を超えるものだと理性に訴えかけます。ローマ市民の誇りと伝統を前面に出すことで、王位を求めたカエサル殺害は「仕方なかったこと」を納得させます。劣勢に立たされたアントニウスはそれを上回る演説をしなければなりません。そこでアントニウスはブルータスのやり方を逆手に取って、ブルータスの偉大さを讃えつつも、カエサルの痛ましい亡骸を前面に出し、情に訴えて見事に聴衆の心をつかみます。理屈としてはブルータスに軍杯が上がるのですが、人間の情愛ではアントニウスに軍配が上がります。結局後出しジャンケンのようなもので、空気の流れはブルータスこそ狼藉者だという方向に傾きました。

このエピソードはシェイクスピアの創作くさいのですがどうでしょうか? 「人は理性よりも情を優先する愚かな一面を持つ」これは大変大きなテーマです。それを描きたくてこの題材を選んだといっても過言ではないでしょう。一瞬の快楽の為に人生を棒に振ってしまう人が途絶えたためしがありません。一時代の繁栄のために専制君主制を選んでしまうのも同じことです。歴史という長い目を通してみればこの判断は愚かなことが明らかです。しかし、その時代を生きる人たちにとっては、それではいけない理由があったのでしょう。
市民は煽動されたわけではなく、正しく共和制を理解していなかったのではないかな。彼らはカエサルが各国から引き抜いてきた地方の豪傑たち、つまりカエサルの息がかかった成り上がり者だったのではないでしょうか。伝統をを重んじる知識層は彼らが疎ましくてならなかったが、最終的には数と力によって競り負けたというのが正解な気がします。

蛇足

ハムレットがそれほど面白くなかったのは、やはり訓練の問題なんでしょう。比較的得意な分野であれば、これまでの知識と対比しやすいからか、びっくりするほどすんなりと頭に入ってきました。この調子であれば、他の物語も読んでいてもいいかもしれないですね。

物語ハムレット (シェイクスピア・ジュニア文学館 6)

定番中の定番。シリーズの内、どれを購入しても良かったがネームバリューのわりには中古品が安値で出ていたので購入した。なお、ロミオとジュリエットについては新品とほとんど値段は変わらない模様。

きっと面白いという先入観で読んでしまったからだろうか、あんまりおもしろくない。悲劇だということは読む前からわかっていたが、後味が悪いなりにも何かしらの爽快感は得られると思っていたのが大間違い。張り巡らされた伏線が回収されることもなくグダグダに終わっていった…と考えていいのだろうか…まぁ第一印象そんなところだ。人生はそんなドラマチックではないので、また違った風味のリアリティーはあるわけだが… 。物語としての完成度が高い作品は他にももっとたくさんあるだろう。少なくとも自分にとっては「古いこと」以外に特別な印象は持てなかった。確かに哲学的な部分は割と面白いし、ダジャレや言葉の理を通じて深いメッセージが込められていそうな気もするんだが…なにぶん翻訳なので魅力のほとんどは伝わっていないと思われる。児童向けということで内容は簡単にまとめられているのだろうか? この本を楽しむには私はあまりにも一般教養が不足しているのだろう。演劇部の高校生が演じる題材として打って付けなのは間違いない。そうか、これは小説というより、劇の台本なんだな。なるほど、本ではなく、舞台を見て楽しむ作品なのだな。

子供にとっての評判もあまり芳しくない。たぶん読んでないだろう。というか小学四年生にはちょっと早いような気がする。まぁ置いてあれば暇な時に読むだろう。

もうちょっと挿絵が多ければ興味を持てたかもしれないが…小説の挿絵には賛否両論あるだろうが、控えめにするのなら、わざわざ里中先生を引っ張り出して来なくてもよかったのではないだろうか? 。そこに期待して購入した人もいるわけだし。割と一冊のお値段も張るのでこのままコンプリートを目指すのは躊躇してしまうなぁ。

方丈記 マンガ古典文学シリーズ

無事にギリシャ神話シリーズを読破したということで古事記の漫画を探していました。

古事記 壱: 創業90周年企画 (マンガ古典文学シリーズ)

古事記 壱: 創業90周年企画 (マンガ古典文学シリーズ)

古事記 弐: 創業90周年企画 (マンガ古典文学シリーズ)

古事記 弐: 創業90周年企画 (マンガ古典文学シリーズ)

またまた、里中満智子先生ですね。やはりおさえるジャンルは幅広い。この手の作品は時代にあわせて絵柄を変えていかなければならない上にドル箱になる見込みが少ないということで、大物作家が名誉職的な意味合いで挑戦することが多いようで、古事記についてはこれまでも名だたる大物達が描いています。お気に入りの作家が挑戦していないが、探してみるのも面白いかもしれませんね。

この二冊をポチりかけたのですが、その前に、こちらが目に入ってきまして…

方丈記: 創業90周年企画 (マンガ古典文学シリーズ)

方丈記: 創業90周年企画 (マンガ古典文学シリーズ)

これは読まずにはいられないでしょう。え、これがどんな作品かって?何の自慢にもなりませんが、古典の授業を睡眠時間としていた私にとって方丈記鴨長明どちらも全く無縁の存在で、どんな話かは全くわかりません。日本史の授業でも同じように寝ていたので、どの年代のどのような時代背景であったのかもわかりません。

名目上は「子供に古典を読ませるため」に購入するわけで、子供が読んでくれることを前提としています。この作者なら「ゲゲゲの鬼太郎」つながりで興味を持ってくれるかもしれないし… 。しかし、題材はあまりにも地味すぎて少々不安なところもあり… 。子供の頃の自分だったら間違いなく見向きもしないだろうからな… 。

購入後、早速子供に渡してみましたが、予想通りというか、これがびっくりするほど読まない… 。ページをめくる以前に、表紙の「古典」という文字を見ただけで拒絶反応を起こして「私は歴史とか古典て苦手なんだよねぇ」とか言い出す始末。何を言っているんだ…お前の持っている本の大半は歴史と古典なんだが… 。そんなこと言われたら買う本がなくなっちゃうじゃん… 。ヒアリングを行った結果、日本史と日本の古典は苦手らしい。登場人物が似たような漢字ばかりで名前の区別がつきにくいあたりにとっつきにくさがあるようです。あとここは重要な問題なのですが「イケメンが出てこない」のもマイナスポイントらしい。

仕方がないので、自分だけで読むことにしていましたが、これは確かに小学生は無理だ… 。むしろこの世界観に心打たれて没頭するような小学生がいたら嫌すぎますわ。鴨長明現代社会のニートそっくりじゃないですか?「働いたら負け」と言いながら上から目線で社会を批判するブロガーとやっていることがほとんど変わらないですよね。時代背景もなんとなく似ているし、すごく痛々しいんですけど。

巻末には、原文が掲載されています。これを読む限り確かに歌のセンスはありますし、言い回しも上手ですから、内輪ウケはしたでしょうね。本体の漫画よりも魅力的で引き込まれる完成度ですから。本体の漫画は時代背景を押さえるための参考文献程度に考えておいた方が良いかと思われます。あくまで作品は日記風なので、話のオチもありませんし、盛り上がる部分もありません。普通の漫画と同じような気分で読んでしまうとがっかりすることになるでしょう。方丈記には時代背景や社会情勢については全く触れられていませんから、それを補足するために漫画にした本だという前提で読むべきですね。結果的には漫画と巻末の原文を交互に読んでいく形になるんじゃないでしょうか。

世界観は荘子に似ている、と言えばいいでしょうか。世の中の無常を飲み込んで絶対的な精神世界に生きる場所を求めるといった感じですか…決して嫌いではありません。老子は大好きですし。

マンガ・ギリシャ神話 オデュッセウスの航海

ついに感動の最終巻!

このエピソードがラストを飾るにふさわしいかどうか。神話なのでキリのいい終わり方をしてくれないのですね。ファンタジー世界の冒険物語として読んでいる人にとっては、少々物足りないかもしれないかな? 純愛を描いたお話としては上出来といえるでしょう。価値観をどこに置くかで評価が変わってくるかもしれません。少女漫画をベースにする作家だけあって、ラブロマンスの盛り上げ方は流石といえます。

オデュッセウスの夫婦愛には感動させられましたが、印象に残ったのはロミオとジュリエットの話と王様の耳はロバの耳の話ですね。どちらもギリシャ神話から派生しているとは思わなかった。

シリーズ通しての成果と言えば、子供が何度も繰り返し読んでいるところですね。あまりに夢中すぎて脱線した読み方を始めてしまわないか少々心配ではありますが… 。次はどんなシリーズに手を出そうかな

マンガ・ギリシャ神話 トロイの木馬

トロイの木馬―マンガ・ギリシア神話〈7〉 (中公文庫)

トロイの木馬―マンガ・ギリシア神話〈7〉 (中公文庫)

ついにやって来ましたトロイア戦争。ここまでくれば歴史の世界まであと一歩ですね。

ギリシャ軍の総大将アガメムノンといえば、歴史の教科書では黄金の仮面が掲載されているので立派な王様というイメージでしたが、物語上では器の小さな欲張りな男ということになっています。話の発端は女の取り合いから始まっているので、そうなるのも当然といえますが… 。こいつを中心に話を回しても面白くもなんともないので非業の死を遂げた英雄アキレスが主役となります。

しかしこのアキレウストロイア戦争に参加するきっかけになった話がこれまたなんとも… 。戦争に参加すると命を落とすという予言があったため、母親は女として生きることを要求した。彼の女装は完璧で誰も見に行くことができなかった。しかし、戦争への参加者を探すオデュッセウスに居所を探りあてられ、正体を暴かれてしまう。その手口はこんな感じだ。商人に扮したオデュッセウスは女たちに美しい衣装やアクセサリーを見せた。女たちはドレスに夢中になったがアキレウスはその中に一本だけ紛れ込んだ刀に夢中になってしまった。古代ギリシア人はよほど美しさにこだわりがあったのか、こういう話が多いですよね。まぁそれはともかくオデュッセウスも策士ですよね。どんなに変装しても深層心理だけを隠せない。我々の世代で言えば、リカちゃん人形と着せ替えセットの中にひとつだけガンプラが混じっていたようなものでしょうか。それなら絶対ガンプラですよね(断言)

さて、本番のトロイア戦争ですが、古代中国の逸話とは違ったスタイルも盛りだくさんで、興味は尽きません。なにしろ予言によって勝利条件が与えられます。どこのシュミレーションゲームだよ… 。有名なトロイの木馬は兵隊を城内に送り込むためではなく、勝利条件に設定された「城門を破壊する」ために作ったのですね。それも力ずくで破壊するのではなく、相手側の意志によって自発的に破壊させるという計略だったわけです。計略大好きの古代中国でもこんなエピソードは思い当たりません。

しかし木馬が入りきらないから城門を破壊するとか、あまりにも乱暴な話だよなぁ。普通なら木馬の方を分解して搬入するだろうけど、宗教的な理由からやらなかったんだろうか?

主役とも言うべきアキレウスですが、無双の活躍をした後、唯一の弱点であるアキレス腱に矢を受けて落命します。身も蓋もない言い方をすれば、流れ矢にあたって傷口から感染症引き起こして死んでしまったのでしょう。英雄って案外あっけない死に方をしますよね。三国志にもそんな猛将いましたよね。「死ぬために戦う男」というテーマは英雄にカッコ悪い終わり方をさせない配慮というべきかもしれません。この無双ぶりといい功績を認められずに拗ねるとこら辺は項羽の姿と被ります。もっとも、彼が項羽であったらアガメムノンごときでは制御不能でしょうけど。

もう一つ気になる存在がカサンドラです。この時代、女性といえば霊感が強く、預言者として重宝されていたはずなのに彼女の予言は何一つ受け入れられません。それだけ戦争がヒートアップして余裕をなくしていたといったところでしょうか。実のところ、この時代の人ですら既に予言なんてこれっぽっちもしていなかったと想像しても別段違和感はありません。もっとも、彼女の予言を無視したがためにトロイアは滅亡してしまうわけですが。