第四章 道は冲しくして、之を用うれば或いは盈たず。
原文
道冲而用之或不盈。淵兮似萬物之宗。
挫其鋭、解其紛、和其光、同其塵。
湛兮似或存。吾不知誰之子、象帝之先。
訓み下し文
道は冲しくして、之を用うれば或いは盈たず。淵として万物の宗たるに似たり。
其鋭を挫き、其紛を解き、其光を和らげ、其塵に同じくす。
湛として存する或に似たり。
吾、誰の子なるかを知らず、帝の先に象たり。
解釈
道とは巨大な器で、中の水を汲みだそうとしても使いきれないだろう。淵のように深々と入り混じっていて、万物の根源のようだ。そして、たっぷりと溜まっているようだ。
私にはそれがどこから生まれたかはわからないが、宇宙より先に存在したのだろう。
備考
難解な章。その難解さは中段にある「挫其鋭、解其紛、和其光、同其塵。」の句。これがどう解釈しても前後がつながらない。これと同じフレーズが第五十六章にもあり、これを錯簡とすることで意味がつながってくる。そこで今回はここを読まない方針で進めた。
章の内容は道の姿について。道は目に見えないので抽象的な表現となっている。大ざっぱにいえば巨大な器で中には液体が入っているらしい。そして、それは宇宙誕生の前から存在したと。
まぁSFみたいな想像上の話なので、そういうもんだと思っておけばいいだろう。
道冲而用之或不盈
「或不盈」は「ほぼ間違いなく満杯だろうが、もしかしたら減ってることもあるかもしれない」くらいだろうか。なぜ使っても一杯なのか。想像を超えるスケールだから人類が使う程度じゃ減ったうちに入らないと考えてもいいし、第六章の川のように新たに流れてくるからと考えても良い。第四十五章にも「大盈若沖、其用不窮。」と似た表現がある。
淵兮似萬物之宗
第二十五章で「有物混成、先天地生。」とある。淵はただの崖っぷちではなく、中身が混沌と入り混じっているのだろう。
湛兮似或存
冲として空洞ではあるが、からっぽではない。湛という字で液体が入っているとしている。
吾不知誰之子
自分が誰の子か知らないわけではない。略されている「それ」を補う。もちろん「それ」とは道のこと。つまり、道を生んだのが何者なのかは私にはわからないの意味となる。
象帝之先
天地の創造者である天帝より先にその現象があった。
テーマ
ヒント
冲(チュウ)
沖と同じか。
淵(えん|ふち)
水が深く静かに貯まっている場所。その様子。
宗(そう)
先祖。
物事が始まったルーツ。
主張。
話したいことのテーマ。
湛(たん)
水がどっしりと湛(たた)えられている様子。
吾(わ-れ)
私。老子のこと。
象(しょう)
形。
帝(てい)
天帝。宇宙を支配する絶対的な存在。
天帝からのメッセージを受ける資格(能力)を持つ者を皇帝という。よって、皇帝は天帝と人類の中間管理職。
熟語(1種/1回)
ルビ無版下し文(コピペ用)
道は冲しくして、之を用うれば或いは盈たず。淵として万物の宗たるに似たり。
其鋭を挫き、其紛を解き、其光を和らげ、其塵に同じくす。
湛として存する或に似たり。
吾、誰の子なるかを知らず、帝の先に象たり。
其鋭を挫き、其紛を解き、其光を和らげ、其塵に同じくす。
湛として存する或に似たり。
吾、誰の子なるかを知らず、帝の先に象たり。