第四十七章 出ずること弥遠ければ、其の知ること弥少し。
原文
不出戸、知天下、不闚牖、見天道。
其出彌遠、其知彌少。
是以聖人、不行而知、不見而名、不爲而成。
訓み下し文
戸を出でずして、天下を知り、牖を闚わずして、天道を見る。
其の出ずること弥遠ければ、其の知ること弥少し。
是を以て聖人は、行かずして知り、見ずして名づけ、為さずして成す。
解釈
家から出ないで天下を知る。窓から外を見ないで天の道を見る。
遠くまで出かけてしまうとわかることは減ってしまう。
だから、賢者は出かけずに知り、見ないで理解し、何もしないで成し遂げる。
備考
真理とは日常のありふれた中に潜んでいる。聖人が凡人に混じって生活しているように、道も日常にある。それは例えば第十六章のような自然のうつろいなどだ。それをわざわざ遠くまで出かけると、珍しさに目を奪われて第三十五章の過客のようになってしまう。
賢いとは当たり前のことを当たり前として受容できることだ。だとすると、「為さずして成す」とは死ぬことかもしれないね。何もしないで死を受け入れる姿を美しく感じるのは、簡単なようで難しいからではなかろうか。
不見而名
名は何らかの表現をする。見て触って、それがどんなものなのか、名前をつけて言い表す。
ルビ無版下し文(コピペ用)
戸を出でずして、天下を知り、牖を闚わずして、天道を見る。
其の出ずること弥遠ければ、其の知ること弥少し。
是を以て聖人は、行かずして知り、見ずして名づけ、為さずして成す。
其の出ずること弥遠ければ、其の知ること弥少し。
是を以て聖人は、行かずして知り、見ずして名づけ、為さずして成す。